ARUKUKI ー「氷は急にはとけない」 季節のお便り ー Vol 11.
季節にあわせてわたしたちの近況をお便りにしてお届けします。
氷がとけて水になりはじめる「雨水(うすい)」
こんにちは。
季節にあわせてわたしたちの近況をお届けする「ARUKUKI ー 季節のお便り ー 」
本日、2026年の雨水(うすい)を迎えました。
寒さがゆるみ雪が雨にかわり、氷がとけて水になりはじめるころ。
とけた水が大地に染みこむことで、潤いがもたらされ、草木の芽吹きへとつながります。目には見えなくても、確実に何かが動き出していることを感じられる季節です。
■ 氷は、急にはとけない
雨水の面白いところは、春のように華やかではないこと。
日差しは春らしくなってきましたが、まだまだ風は冷たいです。
しかし、表面的な寒さの向こう側では、静かに変化が起きています。
私は、発達や家族システムも、これと同じだと思うのです。
硬直した関係性が急に変わることはありません。
役割をといたからといって、役割の影響がなくなることもありません。
コーチングや組織開発のお話をいただく時に、お客さまから「早くなんとかしたい!」という気持ちを受け取ることがあります。
その気持ちも十分わかるのですが、「雨水」のように変化はゆっくりと起こるものです。
ゆっくり凍った氷は、ゆっくりととけるのです。
■ ジェノグラムは氷の地図
みなさんはジェノグラムをご存じですか?
ジェノグラムは人ではなく構造を見るためのツールで、一言で言えば関係性の構造を可視化する地図です。
家系図と似ていますが、まったく別物です。
単なる血縁の図ではなく、
誰が誰と距離が近いのか
誰が調整役を担っているのか
どの世代で葛藤が起きているのか
どんな役割が繰り返されているのか
といった、見えない関係性の力学を描き出します。
組織や家族の問題は、たいてい「人の問題」に見えます。
あの人のせいだ。など。
しかし、ジェノグラム的に見ると、問題は人ではなく、どの場所にいるのかと役割が大きく影響していることがわかります。
そんなジェノグラムを私たちは組織開発やファミリービジネスの支援で活用しています。
■ 組織の役割は、こうして凍っていく
たとえば組織でジェノグラムを紐解いていくと、こんなことが見えてきます。
創業者が強い会社では、2代目が調整役を担い続ける
長男・長女気質の管理職が、無意識に責任を抱え込む
安定した成果を出し続けるエースが、リスクを負えなくなる
また家族のジェノグラムでは、こんなことに気付かされます。
両親が共働きで忙しい家庭では、長男・長女が第二の親になる
感情を出さない父のいる家庭では、母が感情の代弁者になる
不安定な家族関係の中で、誰か一人が問題児を引き受ける
一度この役割が良しとされてしまうと、本人も周囲もその役割に慣れはじめます。
「あなたはしっかりしているから」
「あなたは頼りになるから」
「あなたがまとめてくれるから」
こうして役割が固定され、やがて氷のように硬直していきます。
ジェノグラムでは、誰がどの位置に立ち、どの役割を引き受け、その役割が今も必要なのかどうかを見ていきます。
家族であれ、組織であれ、
長男や長女が責任を背負い続ける
2代目が調整役をやめられない
従順なエースが大きな挑戦を回避する
これらはすべて硬直した役割の特徴です。
ジェノグラムは氷の地図。関係性の中で、どこの何が凍っているのか。それが見えた瞬間、問題の矛先が個人から構造へと移ります。
そして、特定の人々を「なんとかしよう」ではなく、硬直した構造を「解いていこう」という選択肢が生まれるのです。
■ 未来の選択肢を増やす
ARUKUKIでは、最近、ジェノグラムを描く機会が増えています。氷の地図を使うことで、未来の選択肢を増やすことにつながっていることを実感しています。
氷がどこで厚くなっているのかを知れば、無理に叩き割らなくてもいいのです。
雨水のように、自然にゆるませる方法が見えてきます。
「見えない役割」の影響力は思っている以上に大きいです。その組織や家族を守ってきた知恵でもあるのです。
しかし、氷が解けないまま、その役割を握り続けると、苦しくなることがあります。
雨水は、「もう、少しゆるめてもいいかもしれませんよ」と教えてくれる季節です。
■ ソーシャルマスクもゆるめられる
ジェノグラムが「関係性の構造」を可視化するものだとすれば、私たち一人ひとりの内側にも、また構造があります。
そのひとつが、ソーシャルマスクです。
ソーシャルマスクとは、社会の中で機能するために身につけた役割の顔のことを指します。
たとえば、私だと、
母としての顔
支援者としての顔
経営者としての顔
常に冷静でいる人の顔
それぞれのマスクには特徴があり、マスク同士で矛盾する部分もあったりしますが、嘘偽りはありません。必要性があり身につけてきたものです。
ソーシャルマスクには1つ問題が潜んでいます。それは、特定のマスクを自分そのものだと錯覚してしまうこと。
本来、マスクは状況に応じて外せるものです。しかし、固定化すると内側の感情や本音が見えづらくなります。
ソーシャルマスクを外せなくなったとき、それは構造を硬直させることがあります。そしてその硬直は、 組織にも家族にも影響を及ぼします。
雨水の今、少しだけ自分のマスクをゆるめると、
「本当は疲れている」
「本当は〇〇したかった」
そんな声が、自分の内側から静かに浮かび上がります。
氷がじんわり静かにとけていく。
私は今、その感覚を大切にしています。雨水の季節のお便りをこれにて締めくくりたいと思います。
■ 最後に(問い)
今日は、少しだけこんな問いを。
私はどんなマスクをつけているだろう?
そのマスクは、いつから必要になったのだろう?
いま、少しだけゆるめられる部分はあるだろうか?
雨水は、氷がゆるむのを感じる日。
春は、こうした小さなゆるみの積み重ねの先にあります。氷が解ける音は、とても静かです。
雨水は、氷がゆるむのを感じる日。
私たちのマスクも、ほんの少しだけゆるむかもしれません。
こっちゃんでした!
■ 最近の活動のご案内
■ 発達志向型のご支援について
ジェノグラムに加えて、ここ数ヶ月、発達志向型のご支援に関するお問い合わせが少しずつ増えてきています。
これまでご案内していた LDMA(Lectical Decision Making Assessment) に加えて、Lecticaが提供している GRCA(General Role Complexity Assessment) や
PRCA(Precise Role Complexity Assessment) への関心も高まっています。
LDMA:思考の複雑性や意思決定の質を測定する個人向けアセスメント
GRCA:組織の各階層において求められる認知能力の発達段階アセスメント
PRCA:組織の重要ポジションにおいて求められる認知能力の発達段階アセスメント
いずれも「能力の優劣」を測るものではなく、
いま、どのような意味づけの枠組みで世界を捉えていくのかを可視化するものです。
氷を無理に割るのではなく、
どこがどのように凍っているのかを知るための「地図」をつくるようものです。
ご関心のある方は、お気軽にお声がけください。
■ おまけ
この1ヶ月、「保活」をがんばっています。
保活とは、子どもを「保育園」に入れるための「活動」を指すようです。
うちの2歳児が通っていた保育園は、発達理論をベースに、一人ひとりの子どもとじっくり愛着を育む、あたたかな園でした。
しかし昨年度から運営会社が変わり、保育方針も変更されました。
その影響で、園長先生を含む多くの保育士の方々が、年度途中にもかかわらず退職されました。
理念が変わり、人も入れ替わる。
看板は同じでも、そこに流れる空気はまるで別の園のようです。
娘も、言葉にはできない変化を感じているようで、私たち夫婦も、どこか落ち着かない日々を過ごしています。
今日のテーマは「氷は急にはとけない」ですが、組織は、ときに急に姿を変えることがあります。
保育園の運営もビジネスです。
経営には事業モデルが必要でしょう。
それでも、長く続く組織には、守り続けてきた理念と、支えてきた人がいるのだと思います。
今回の出来事を通じて、理念と人を大切にすることの意味を、あらためて考えさせられました。
保育園は、園児を中心に、保育士と保護者がともに守っていく場。
日々子どもたちと真摯に向き合ってくださる保育士のみなさんに、あらためて畏敬の念を抱いています。
おくちゃん(奥野雄貴)
季節のお便りいかがだったでしょうか?
ぜひみなさまのご感想やコメントもお待ちしております。
また、この季節のお便りのシェアは大歓迎です。
どうぞこれからも季節のお便りを楽しみにしていてください。
2026.2.19. 雨水
ARUKUKI
奥野雄貴 & 松下琴乃
コメントやご質問は大歓迎です!




